えーと、横井はかれこれ15年以上Macユーザーをやってまして、 ジョブズの芸術的プレゼンやジャン=ルイの華麗な傲慢やマックからマクドへ移籍した人の空気っぷりといった諸々を見るかたわら、自分の趣味や仕事にアップルプレゼンツを取り入れてきたんですが、その経歴の中で手放せないソフトウェアというものが幾つかありました。そのうちのひとつが『EGBridge』という、日本語入力用アプリケーションです。
漢字Talk7時代(西暦になおすと1990年代前半)のMacintoshは日本語の扱いが悪く、OS標準の『ことえり』は、文章の意図はもちろん文節や単語のひとつすら上手く変換してくれず、漢字一文字ごとに変換させていくということもザラでした。そのころMacにはATOKはなく、またサードパーティもパイの小さいMac用日本語入力ソフトという分野に進出してくることもほとんどなかったのですが、ただ一社、この不毛の地を耕していたソフトメーカーがありました。
それがエルゴソフト。KOEI(現:コーエー)の連結子会社であり、Mac用の日本語入力ソフト『EGBridge』そして日本語ワープロ『EGWord』を提供し続けてきたこのメーカーは、Macintoshにおける日本語環境の充実というニッチな役割を24年間の長きにわたって果たし続けてきました。
日々作り出される新しい言葉や文章に対する変換効率の向上や辞書の充実。新機種や新OSが出たときの迅速なサポートや、また既知の不具合に対する対処など、当然のことを当然のようにやり続けてきた姿勢は、横井のみならず、多くのMacユーザーの方々に長く親しまれてきたものと思われます。
そのエルゴソフトからこの度パッケージソフトの販売終了および事業の終了という知らせが届いたのは、まさに青天の霹靂というか、起こって欲しくない最悪の事態が起こったといわざるを得ません。
で、考えてみたんですよ。
Macという狭いカテゴリではありながら寡占的な日本語ワープロであるこのソフトが、
何故死なねばならないのかを。
ATOKの進出?
それはもちろんあるでしょう。MacがインテルCPUを採用して以降、Windows環境になじみを持つ人達は多くATOKを選んだものと思われます。しかしATOKの挙動及び使用感はEGBとは一線を画しており(どちらがいい悪いという話ではなく)既存のEGBユーザーが乗り換えを検討するには至らないものと考えます。
ことえりの成熟?
これも大きい要素でしょう。エルゴサイトの事業終了に関する説明にもある通り、アップル謹製の日本語入力ソフトが時を経て熟成され、他社のソフトを駆逐する遠因となったーしかしこれも上に同じく、ユーザーがひとつのFEPで培った慣れや使用感というものは他のソフトがより良くなったからといってそう簡単に乗り換えられるものでもなく、エルゴにとっていくらかのシェア減はあるにしても、事業として行われているものをハイ止めますといえるものなのかというと、いささかの疑問が残ります。
それでは、日本市場におけるMacの売れ行きが悪いから?
これもおかしな話です。1990年代はOSのシェアも本体の売れ行きも現在より壊滅的に悪い時期があり、そうした荒波を乗りきってきた会社が、いまさらこのような理由をつけて24年の歴史を終わらせるというには、なにか釈然としないものが有ります。
となると、やはり何か別の見えない力が働いたからではないかと思わざるを得ないのです。
では、その「見えない力」とは?
先述した通り、エルゴソフトはコーエーの子会社です。親会社の意向に従うのはもちろんですが、親会社に深刻な事態、また金銭的な損失が発生したなどの場合に、不採算部門やトップの意に沿わない製品はディスコンされていくことになります。
ここからは想像の部分を含みますが、コーエーにおいて深刻な事態が発生したというのなら、それは一体何に因るものか。コーエーはゲームメーカーです。良いゲームを作り続けることが会社を継続させていくことのシンプルにして最大の課題です。もしこれが達成されなかった場合会社はユーザーの信頼を失い、ひいてはその存亡に関わってくることになります。
しかしコーエーはその肝心のゲームで、やらかしていました。
WiiはおろかPS3もXBOX360も所有していない横井としてはコーエーといえば『水滸伝・天命の誓い』と『蒼き狼と白き雌鹿・元朝秘史』の続編を早く発表してくれよというくらいの印象しかない(ウソ ホントはもうちょっと愛着ある)のですが、目標本数を50万本に設定し、さらに制作期間や開発費も相応にかけたゲームが初週2500本で、その後も鳴かず飛ばずということであれば、その失敗のしわ寄せは必ずどこかに来るわけであって、不採算とは言えないまでも今後の急成長の見込めないエルゴがその矢面に立たされたのだとすれば、これは非常に八つ当たりのような処遇であり、またMacと何も関わりの無い人達から見れば笑い話のような出来事だろうなあということは、想像に難くありません。
まあ三国志と同じ時期から脈々と続いてきたソフトを
殺された方からするとたまったもんじゃないですけどね!
もしエルゴソフト終了の件についていささか真相に近いことを御存知の方がいらっしゃいましたら、解説サイトリンクでもなんでも構いませんのでお教え頂ければ幸いです。
いやもうホント、なじみのあるソフトなだけに、ダメージが大きくて...
しかし、こういう会社ぐるみのプロジェクトが大ゴケして屋台骨そのものが揺らぐというのをみると、なんかドリームキャストにおけるシェンムーシリーズを思い出しますね。あっちはまだ企画そのものは継続中のようですが。